野生(在来)メダカ

このページでは野生(在来)メダカと改良メダカの違いを説明したいと思います。まず、メダカ(目高、鱂(魚に将))は、ダツ目メダカ科メダカ属(学名 Oryzias)に分類される淡水魚の総称となります。昔の本ではカダヤシ目として紹介されていましたが現在ではダツ目に。カダヤシ目に属する種でいえばグッピーやヨツメウオがいます。ダツ目の中にサンマ・トビウオ・サヨリが含まれていて秋刀魚など横から見ると顔が少しメダカに似ていると思いました。
 

野生メダカの分布図

日本のメダカは北日本集団と南日本集団という、遺伝的な特徴の異なる2つのグループに分けることができます。北日本集団のメダカは、北陸から東北地方の日本海側にかけて分布しています。
一方、南日本集団は、北海道を除くそのほかの地域に広く分布していて、地域ごとに細かく分けられています。
 

 
日本のメダカは、北日本に生息する「キタノメダカ」と関東以南に生息する「ミナミメダカ」の2種が存在します。さらに遺伝子レベルの違いでキタノメダカは3グループに分かれており、ミナミメダカは12グループに分かれています。
それと、固有種の遺伝子には、自然環境の変化などに適応してきた地域ごとのデータが遺伝子に刻まれており、純血種の遺伝子情報自体が自然環境の変化やその地域の歴史を分析するための貴重な資料になります。
 

むやみな放流は遺伝子に影響する

メダカは青森県から琉球列島までの日本と朝鮮半島、台湾、中国大陸の一部でみられる魚です。このように広く分布していますが遺伝的に4つの集団に分けられており、そのうち2つの集団が日本国内に分布しています。これらの2つの集団には尻ビレの条数など形態的な差異あるとも言われています。
近年はメダカの減少に伴い、メダカを繁殖させて自然界へ放流する人間や団体があるんですが、酷い場合はペットショップ等で購入したメダカや改良メダカのハネ魚を放流している事すらあります。改良メダカを放流すること自体は論外ですが違う地域の野生メダカや産地不明の野生メダカなどを放流する場合も、遺伝的な分布の混乱に繋がってしまうのでやめた方が良いでしょう。
また、少数の個体から繁殖させたものはどれも同じような遺伝子を持った個体になりやすく、このような個体を放流することによって、その地域のメダカの遺伝的な多様性が失われる可能性もあります。

 

野生メダカの減少

メダカは1999年に初めて将来絶滅する恐れのある種に指定されました。
その後、2007年に北日本集団と南日本集団のそれぞれが絶滅する恐れのある種に再び指定され、現在に至ります。絶滅危惧種Ⅱ類は100年間に10%以上の確率で絶滅する可能性があるそうです。
絶滅危惧種とは世界で絶滅の恐れのある種のことで国際自然保護連合(IUCN)がそれらの種をカテゴリーやランク分けし、とりまとめた情報を元にレッドリストを作成しています。どのランクにも世界共通の基準が設けられており、種が減少する早さや分布する広さ、絶滅確率などです。これらの基準にしたがって評価されています。
 
 

野生メダカが減ってきた原因

稲作面積の減少
1960年頃の稲作面積は300万haで2016年は148万haと50年ほどで稲作面積が約半分になり、メダカの生息場所が減少。

水路やほ場の整備
開発工事は農業の生産性を高める反面、自然の生態系バランスも崩します。

田んぼと水路の分断
ほ場整備などで排水路と田んぼの間に大きな段差ができるとメダカなどの魚類は田んぼに上がったり、水路へ下ったりできなくなります。
他にも水路の中や水路が川に落ち込む場所に垂直の落差が造られると魚は上がり下りできなくなってしまいます。

農薬による影響
1950年代から1980年代にかけて稲作りでは普通の昆虫や魚、水生植物も殺してしまう農薬が多量に使用されました。 その結果、魚類をはじめとする多くの生物がダメージを受けました。現在は農薬取締法などで毒性の強い農薬は使われなくなりましたが生態系に全く影響がないとは言えないでしょう。

外来魚による影響
1970年頃から全国の池や河川に外来魚が侵入したり人の手により放流されて急速に分布域を広げた結果、メダカなどの小魚は格好の餌食となり食い荒らされて減少していきます。カダヤシはメダカと生息環境が重なる場合が多く、カダヤシの方がメダカより大きいのでメダカが縄張り争いに負け、生息域を失っている可能性もあります。
カダヤシは元々、北アメリカに生息していた魚で、蚊の幼虫であるボウフラを退治するために移入された外来種です。色や形、大きさがメダカによく似ており、流れのない小川など、好む生息環境も重なることからメダカと見間違える人もいると思います。カダヤシはメダカよりも気が荒く、同じ場所に住んでいるメダカに攻撃を仕掛けたり、稚魚を食べてしまったりすることから野生のメダカが数を減らした原因の一つではないかと言われています。
ちなみに2006年にカダヤシは特定外来生物に指定されたので許可のない飼育や移動は法律で禁止されています。