鯉の病気

鯉の病気

鯉の病気を詳しく解説

長寿で強健と言われている鯉でも、時には病気になることは避けられません。病気の診断と治療には専門的な知識が必要であり、素人の判断はできるだけ避けるべきです。病気になったと思った場合、まずは鯉を購入したお店に連絡して的確なアドバイスを受けましょう。

日々の鯉の状況を注意深く観察し、早期発見・早期治療を心がけることも大切ですが、過度に神経質になりすぎず、不必要な薬剤の使用や塩の投入は避けてください。抗菌剤や抗生物質によって、耐性菌などが発生する危険や、塩分濃度があがって水質維持に必要なバクテリアが減ってしまうなどの恐れがあります。

病気対策は、極論で言えば、鯉が病気にならないように徹底的に管理して育てるか、鯉本来の環境適応能力に任せて野生的な環境を再現して育てるかです。専門業者によると、「昔より鯉が大きくならない」「飼育理論の根本的な考え方が誤っているのではないか」といった声もあるようです。これは現代の飼育設備機器や薬品などに頼りすぎたことが原因だということです。管理され過ぎた水で慣らされた鯉は、わずかな変化にも対応できないため、古来から備わっていた強い環境適応力が低下しているのではないかという懸念が提起されています。

 

カラムナリス症
鯉類の野生や養殖において広く知られている細菌性の病気です。この病気は、鯉の体表に存在する細菌によって引き起こされます。
口腐れ病、ヒレ腐れ病、尾腐れ病、エラ腐れ病とも呼ばれますが、これらの名前はそれぞれ、病気が最初に発生した部位に由来しています。例えば、口腐れ病は鯉の口部に発生した場合、ヒレ腐れ病は鯉のヒレに発生した場合などです。
この病気は、鯉の体表から細菌が侵入して腐敗を引き起こすことによって起こります。病気が進行すると、鯉の肌が腐敗し、傷が開いて白い被膜が見られるようになります。また、発病した鯉は食欲も低下し、活発な動きも減少する傾向があります。
カラムナリス症の治療は、発病した鯉を隔離し、細菌を殺菌する薬剤を使用することが一般的です。また、鯉の養分や水質も管理することが重要です。早期に発見して適切な治療を行うことが、鯉を救う上で重要です。発病したら抗菌剤を使ってカラムナリス菌を殺菌します。テラマイシンやエルバジュなどの薬浴とパラザン、イスランのような経口投与の抗菌剤を使う二種類の方法があります。

 

松かさ病
鯉に発病する病気の一種です。この病気は主に複数の細菌(主にエロモナス菌)による感染によって発症します。発病すると、魚のウロコが浮き上がり逆立ってくるようになります。病気の種類や進行具合は、感染種類や魚の健康状態によって異なり、外見的な変化が多いため、外見から確認することができます。
この病気の治療方法としては、感染した魚を取り出し、個別に食塩水やエルバジュなどの薬浴で治療するのが一般的です。穴あき病となった場合は、患部のウロコを摘出したり、びらんした皮膚を切り取る外科的処置も必要となる可能性があります。

 

白点病
白点病は白点虫の寄生によって引き起こされます。この病気は進行が早く、伝染性も高いことから、注意が必要な病気の一つです。特に水温が変わりやすい季節や水温や水質が急激に変化すると発病しやすいとされています。白点病は早期発見が重要で、初期に治療することで白点がとれて健康な体に戻ることができます。初期の症状としては胸鰭や頭部に小さな白点が生じ、次第に全身に広がっていくというものがあります。また、症状が進むと粘液が多量に分泌され水カビのようになります。対策としては、白点虫が表皮の下に潜入しているため、薬剤での虫の駆除は困難ですが、メチレンブルーなどの消毒薬による薬浴が効果があるとされています。

 

寄生虫によって引き起こされる主な病気
まず、「イクチオボド症」、「キロドネラ症」、「トリコデナ症」の3種類があります。原因となる原虫類は「イクチオボド」、「キロドネラ」、「トリコデナ」であり、寄生虫は目で見えませんが、白濁した体表を持った白雲症状を呈します。また、食欲が低下し、体表を擦り付けるなどの異常な行動が見られます。これらの病気を駆除するためには、塩浴もしくは薬剤を用いることが効果があるとされています。

 

ツリガネムシ症
魚に寄生するツリガネムシによって引き起こされる病気です。鯉の皮膚(ウロコ)に米粒大の白い斑点ができます。これが拡大すると、周囲の皮膚が赤くなって充血します。症状が進行すると、ウロコが部分的に逆立ち、欠損や脱落が起こります。治癒したとしてもウロコが変形したままになることもあります。また、潰瘍ができて、泥かぶり病のような状態になります。患魚は体表を擦り付けるような動作を頻繁に行い、末期症状になると水面近くを浮遊し、食欲も不振となります。
対策としては、メチレンブルーなどの薬浴か塩浴を繰り返すことで症状が改善されます。重度な症状の場合、患部からの細菌による二次感染を防止するため、抗生物質の使用も考慮する必要があります。

 

ダクチロギルス症/ギロダクチルス症
この病気は、寄生虫が魚の表皮やエラに固着し、上皮の増殖・肥厚・変形を引き起こします。鰓に寄生し、重篤になった場合、魚は呼吸困難になります。この病気は食欲の低下や異常な行動(注水口や池の隅に群がったり、体表をこすったり)を引き起こします。
この病気の治療方法としては、病気の魚を隔離し、過マンガン酸カリや食塩水の薬浴をすることが有効な治療法です。

 

イカリムシ症
魚に寄生する虫(イカリムシ)が原因で起こる病気です。魚の体表やウロコに付着していると、胸ビレを動かしたり、背ビレを振ったり、体表を壁にこすりつけたりなど、通常とは異なる泳ぎをすることがあります。また、やがて隅でジッとして動かなくなることもあります。
この病気を防ぐためには、水産用マゾテンなどの有機リン剤を散布するという対策があります。イカリムシは肉眼で見える為、寄生されている魚を取り出して麻酔をかけて、ピンセットで虫を取り除いた上で傷口の消毒することも可能です。二次感染防止のための抗生物質の使用も有効です。有機リン剤が効果的なため、昔よりも脅威ではなくなっています。

 

ウオジラミ症
鯉の体表に付着して吸血する虫「ウオジラミ」によって引き起こされる病気です。この虫は、魚の皮膚に吸盤を使って寄生します。これによって、皮膚が損傷を負い、毒液によって炎症が起こり出血することがあります。また、患部に別の病気を併発する可能性もあります。
この病気に対する対策としては、「イカリムシ症」と同様に、有機リン剤を散布することが有効です。この薬は成虫だけでなく幼虫にも効果があり、反復使用することで完全に駆除することができます。

 

新しく発見された病気

浮腫症/ローソク病
1970年代後半に発見された新しい病気で、毎年梅雨の時期に集中的に発生します。原因は完全には判明していないが、ウイルスが見つかっており、そのウイルスが原因と考えられています。この病気に感染すると、飼っている池や水槽の中の鯉が発病し、2〜3日で死滅する急性の病気です。感染した鯉は遊泳せず、水面に浮かんで平衡感覚を失った状態を呈します。体のむくみ、眼球の落ち込み、松かさも見られますが、必ずこれらの症状を発症するとは限りません。梅雨の時期に屋外などで飼っていて、1歳の魚が水面に浮いたり、注水や排水溝の近くに集まったりした場合は、この病気の感染を疑って診察する必要があります。対策としては、早急に塩浴させることが必要ですが、完全に治す方法や感染を未然に防ぐ方法は確立されていない状況だそうです。

 

抗酸菌症
1981年に発病が確認され、発病期間は冬期に限られており、当歳魚が発病することが多い。この病気は結核菌に類似する抗酸菌によって、魚の浮き袋や腎臓などの内臓が感染し、「背コケ」症状が現れることがある。病魚は必ず死なないが、慢性的になり衰弱する可能性がある。疑いがある場合は開腹して内臓の検査が必要である。抗酸菌症の対策については確定されていないが、飼育管理を整えることで回復する可能性があるそうです。特効薬は現在ありませんが、急死することもないとされています。

 

新穴あき病
発病する場所としては、ヒレやヒレの付け根、口唇などが挙げられます。この病気は、今までの穴あき病とは異なり、小型の魚でも発病し、高水温の池では症状が進行するのが早いそうです。患部の大小に関係なく死亡する場合もあり、他の魚にも感染するそうです。従来の抗菌剤では治療効果が得られないなどの特徴があります。しかし、経口投与のタイプの抗生物質で治療が可能であることが確認されており、早期に発見、早期の治療がポイントとなります。
この病気は複数の菌に感染したことによって引き起こされると考えられており、外部からの感染の可能性があります。新たに購入した鯉や鯉を移動する際は、魚をビニール袋などに入れて下部の様子を観察することが重要です。魚体下部やヒレ周辺が赤くなっていたり、充血していたり、ヒレの先端から出血して欠損しているような症状がある場合は、「新穴あき病」を疑うべきです。

 

コイヘルペスウイルス病
マゴイやニシキゴイに発生する病気です。発病すると餌を食べなくなったり、行動が緩慢になる事があり、外見上の症状はほとんど見られない。また、幼魚から成魚まで幅広く発病し、非常に死亡率が高い病気です。現時点ではコイヘルペスウイルス病の治療法は確立されていません。
コイヘルペスウイルスは、1998年にイスラエルやアメリカでコイが大量に死んだことにより発覚しました。そして2000年に新しいウイルス(KHV)によって引き起こされたことが明らかになりました。その後も、ヨーロッパやインドネシアなどでもコイヘルペスウイルス病の発生が認められました。そのため、KHVは海外からの持ち込みが原因と考えられていますが、現時点では「いつ、どの国から、どのように」日本に持ち込まれたかは不明のままです。